障がい年金

 障がいを抱えている本人、またご家族の方にとって、生活をしていく中でさまざまな不便があり、不安を持っておられます。
 特に生活を支える経済的な土台として、所得保障は重要な意義をもっています。この一つとして、公的扶助制度としての障がい年金があります。
 当事務所は、この障がい年金を受給できるようにお手伝いをして、お客様の不安の一部が解消されることを目的に業務をしています。

<1>障がい年金の制度
 障がい年金制度の概要は次のとおりです。
 なお、平成27年10月以降の年金制度一元化により、共済年金の呼び名が変わりましたが、内容に大きな違いはありません。
 障がい基礎年金 (ショウガイキソネンキン)
 障がい厚生年金 (ショウガイコウセイネンキン)
 障がい共済年金 (ショウガイキョウサイネンキン)
<2>受給要件
 各障がい年金を受給できる条件として、次のことが重要です。
 初診日
 障がい認定日
 保険料納付要件
 診断書による障がい状態

※原則として
○障がいのもととなった病気やけがで最初に診察を受けた日が初診日
 障がい厚生年金では、会社の健康診断結果なども参考資料とし、それにより診察した病院が 初診となることもあります。
○初診日から1年6カ月を経過した日、またはその間に症状が固定した日が障がい認定日
○初診日のある月の前々月までの保険料を納めていた状況が納付状況
 保険料を納付しなければならない期間のうち、3分の2以上の期間、納めていなくては条件 に合わない場合もあります。
 または保険料を納めていない期間があっても、過去1年間に保険料の未納がなければ良いなどの条件もありますので、それぞれ確認が必要です。
○初診日に加入していた年金制度(国民年金・厚生年金保険・共済組合)によりどの障がい年金が対象になるか決定します。
<3>必要書類
○必要な書類として
 ・障がい年金の請求書
 ・受診状況等証明書、または受診状況等証明書が添付できない理由書
 ・障がい年金請求のための診断書(障がいの種類によってそれぞれ)
 ・病歴・就労状況申立書
 ・その他、障がい内容により請求に必要な書類があります。
 共通として年金手帳、住民票、状況により戸籍謄本、所得証明、障がいに関する確認
 第三者行為事故状況届、また、初診日を証明するために、入院記録や診察受付簿、健康保険料の納付記録や健康診断書など、それぞれの状況によりさまざまです。
<4>障がいの等級
 障がい年金の等級とは 身体障害者手帳や精神の障害者手帳などをお持ちの人は、その障害等級が年金の等級と混同されている場合もありますが、直接関係している訳ではありません。
 つまり、身体障害者2級の人が、障害年金2級を受給できるとは限らないということです。
 障がい年金は次の障害に該当する場合のみ年金が支給されます。
 障害基礎年金は、障害等級2級以上の障害認定基準に該当する場合
 障害厚生年金・障害共済年金は、障害等級3級以上の障害認定基準に該当する場合
<5>障がい年金の請求別分類
障害年金の請求別の分類については次のとおりです。
(1)認定日請求(本来請求)
 障害認定日(例えば初診日から1年6カ月)を基準として年金を請求する方法です。
 20歳前に障がい状態となっている場合、20歳に達した日から請求できることもあります。
 障がいと認定された日に障がいとなっていれば、その月以降の年金を請求するということから本来請求ともいわれています。
(2)遡及請求
 障害認定日から後、例えば2年後になって年金を請求するけれど、2年前の障害認定日にさかのぼって支給をもとめる請求のことです。
ただし、5年以上さかのぼって請求した場合、年金の支払いは時効により5年前までとなります。
(3)事後重症請求
 障害認定日には障がいの状態が軽く該当していなかったが、その後障がい状態が重くなり障がい等級に該当した場合、その時点から以後の分の年金を請求することです。
 もともとの認定日にすでに障害が重くなっていたが、それを証明する診断書が取得できない場合も、やむをえず現在の診断書を提出して事後重症請求を行うこともあります。
 認定日請求、遡及請求、事後重症請求ともに、初診日、障害認定、保険料納付状況などの条件は変わりません。
 例外としてあるのが、20歳前から障害だった場合、国民年金の保険料は20歳からとなっていますので、20歳時点では、保険料の納付要件は関係なくなります。
 通常は、本人の所得に関係なく年金は支給されますが、この例外は所得によって支給額が減額されたり、全く支給されない場合もあります。
 また、事後重症請求は65歳の誕生日の前日より前でなければ請求できません。
(4)その他の請求
  (ア)特例措置
 昭和61年4月1日前に初診日がある傷病がもとで障がいとなった人で、その当時は保険料の納付要件が違っていたため、障がい年金の要件に該当しなかった人の中で、その後の改正で適用されることになったものもあります。
  (イ)複数の障がいがあることによる併合認定  
 前の障がいでは障がい年金に該当しなかったが、後の障がいと併せると2級以上に該当するとなった場合、またはすでに2級の障がいであったが、さらに後に別な障がいにより併せると上位の等級になる場合に請求する障がい年金もあります。
  (ウ)特別障がい給付金
 平成3年3月以前に国民年金に任意加入(希望者のみ加入していた)の対象であった学生、または昭和61年3月以前に国民年金任意加入の対象であった被用者等の配偶者、つまり厚生年金に加入していた夫又は妻の配偶者で、国民年金の保険料を納めていなかった人の中で、その期間内に初診日があって、現在障がい年金2級以上に該当する場合は、保険料を納めていなかったのですが、納付要件を緩やかにして、年金を支給する制度です。
<6>障がい認定基準
 障がい認定の基準はどうなっているのか、本人、または家族が障ガイ年金を請求できる障がいに該当するのかは大変気になるところです。しかし、私達にとっても必ずこの障害がいであれば年金が支給されると言い切れるものでもありません。
 つまり、請求すれば認定されるのではなく、ある基準を満足しているかどうか、判定の上で決定されることになっています。
 障がい年金の請求をする際に、この認定基準に該当するかどうかが重要です。
 厚生労働省からは障害認定基準が出されています。
<7>障がい年金請求用の診断書
 障がい状態を判定しやすいように、提出する診断書もそれぞれ別な内容のものが用意されています。(平成30年10月現在)
(1)眼の障がい用の診断書
(2)聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障がい用の診断書
(3)肢体の障がい用の診断書
(4)精神の障がい用の診断書
(5)呼吸器疾患の障がい用の診断書
(6)循環器疾患の障がい用の診断書
(7)腎疾患・肝疾患・糖尿病の障がい用の診断書
(8)血液・造血器・その他の障がい用の診断書
<8>障がい年金の支給時期と額
 障がい年金の支給開始は、受給権が発生した翌月からを基本原則としています。
 つまり、障がい認定日に障がい状態であることが証明されれば受給権が発生し、その日のある月の翌月分から支給されることになります。
 事後重症による請求は、請求日が受給権発生となりますので、請求が遅れるだけ支給も遅れることになります。
 障がい基礎年金は、1級と2級だけですが、どちらも定額となっています。
 2級:779,300円/年間+子の加算  (平成30年度基準)
 1級:779,300円×1.25倍/年間  (平成30年度基準)
 一定の条件の子がいる場合は子の加算があります。
 第1子・第2子: それぞれ 224,300円/年間 (平成30年度基準)
 第3子以降  : それぞれ 74,800円/年間 (平成30年度基準)
 障がい厚生年金は、1級から3級までありますが、1級と2級は上記の障がい基礎年金1級または2級の定額部分と報酬比例のがい厚生年金が上乗せされます。
 計算方法は、障がい認定日までの間の平均標準報酬月額と平均標準報酬額という数値を使って行います。これは、給与明細に記載されている標準報酬月額等を対象期間で平均したものですので、各個人毎に違っています。
 また、計算する期間が25年(300月)に満たない場合には、最低でも300月として計算することになっています。
 さらに、障がい厚生年金1級、2級の人に配偶者がある場合、一定の条件により配偶者加算も追加されます。
 配偶者加算:224,300円/年間 (平成30年度基準)
 障がい厚生年金3級の場合は、障がい基礎年金部分は支給されませんので、報酬比例部分だけの額になります。
 ただし、計算した結果が低い場合でも最低保障額が定められていて、その額は保障されます。
 3級最低保障:584,500円/年間 (平成30年度基準)
 その他、厚生年金には障がい手当金という一時金の制度もあります。
 これは、障がい厚生年金3級にも該当しない場合であって、保険料納付も問題ない場合、さらに初診日から5年以内に症状が固定したり治癒したが障がいが残っている場合などの条件があります。
 金額は報酬比例部分の2年分で、
 最低保障額は :1,169,000円/一時金 (平成30年度基準)
<9>障がい年金請求の手順
 障害となった傷病(原因となる状態)の初診日(初めて診療した日)がどこになるか確認が必要です。
 例えば、現在障害となっている原因が2年前の事故であった場合、その事故の際に最初に治療した病院で初診日の証明書を記載していただく必要があります。
 ところが、その前の病院から紹介されてきたという場合は、その前の病院で初診日の証明書を書いていただくことになります。
 この初診日の証明書(受診状況証明書)を取得するのに困難な場合もあります。
 すでに初診の病院は廃業しているとか、カルテは無いので証明を拒否されるとか、障がいのもととなった病気が、実際はもっと前の病気がもとだったため相当過去にさかのぼる必要があるなど、これら個々人により千差万別です。
 初診日決定のための調査などが必要な場合もあります。
 初診日が決定すれば、その日に加入している保険制度(国民年金か厚生年金保険か、共済加入中だったかなど)が決まり、一度年金事務所で納付状況などを確認します。
 その後、必要な書類を受け取って、病院に診断書の記載を依頼したり、自分で病歴・就労状況の申立て書を作成します。
 病院の診断書も請求内容により1枚で済む場合と過去の分も含めて2枚必要な場合もあります。
 また、病歴・就労申立て書は、診察を受けた期間ごと、または場合によっては生れてから全ての期間を5年ごとに区切って記入する必要もあります。
 初診日や診断書が用意でき、さらにそれ以外の障害状況を証明する書類、住民票その他の書類なども添付してやっと年金事務所に障がい年金の請求書を提出します。
 とりあえず書類に不備がなく受付が問題なく済めば、審査期間2か月程度で支給決定の証書が届きます。その証書に次の診断書提出時期も書かれていますが、決定の証書が届けば、まずは年金支給がされることになります。
 これが障がい状態の審査判断によっては不支給の通知が届くこともあります。
 書類の不足等であれば、審査期間中に書類追加の連絡がありますが、書類ではなく、障がい状態が障がい年金の認定基準に合わない場合は不支給となってしまいます。
 この場合、納得がいかないため再度審査を要求するのが審査請求です。
 さらにそこでも不支給が変わらない決定の場合、再審査請求をして、社会保険審査会において審査をしてもらう方法も残されています。
 それでも不支給が変わらず本人が納得いかなければ、最後は裁判にて判断を仰ぐことになります。
 この流れの中で注意が必要なのは、診断書の有効期限です。通常記入日から3カ月を超えた診断書は請求用に使用できませんので、他の請求準備と並行して診断書を用意をするなど、請求時期を考えながら調整しなくてはなりません。
 診断書ができてから当事務所に依頼されてこられる場合もありますが、3カ月といっても他の書類の用意や実情の確認などをしていくと、日程的には非常に短期間です。
 場合によっては診断書を記載していただく医師に記載上の留意点なども説明する必要がありますので、診断書の依頼を進める前にご相談いただけると問題も少なくなります。
 障がい年金のご相談から書類の作成、提出、場合によっては担当医師との相談、審査請求、再審査請求の代理人など、これら一連のお手伝いとして可能なのが社会保険労務士です。
 当事務所を相談窓口として活用していただき、大変面倒で時間がかかる書類作成や年金の請求手続きをご依頼下さい。
<10>費用について
 例えば初診日の証明書では、病院にもよりますが、1通で3,000円~8,000円、診断書を依頼すると1通で5,000~15,000円かかると言われています。
 このため、まったく無料で請求できるという訳ではありません。最低でも必要な書類は用意していただくことになります。
 仕事としてお手伝いをしていますので、報酬もいただきます。しかし、もともと生活に不安をお持ちのお客様が中心ですので、ご相談しながら、例えば障がい年金が支給されたら、その支給額から報酬をいただき、支給されなかったら、報酬としては特に予定しないということも行っています。(全ての場合という訳ではありませんが)
 報酬は、年金支給額の2か月分、または遡及支給があれば、支給額の10%程度が一般的といわれています。当事務所も同等の報酬を基準としていますが、その内容等によりご相談致します。もちろん依頼された人の承認をいただいてから進めていますので、ご安心です。
 とにかく、まずは相談から始めてみませんか。その上で、ご自身が納得しながら進められるようにお手伝い致します。
 ご相談を希望される場合は、当事務所へ電話またはホームページの問い合わせフォームからお送り下さい。電話の場合、不在となっていることもありますが、着信履歴により後ほどこちらからかけ直し致します。
 連絡先電話番号 0495-77-0546(不在の場合は一旦私の携帯電話に転送されます)
 相談は、こちらから伺います。もし近くであれば、当事務所にお越しいただく場合もありますが、場所や日程その他、ご希望に沿って進めます。
 できる限り面談の上、実情をお聞きしたいと考えています。
 障がい年金請求までに何度もお会いしたり相談を行っていかなくてはなりません。
 このため、あまり遠い地域(車で2時間以上かかる場所など)はご相談方法を変更させていただく場合もありますので、ご承知下さい。
 

事例紹介(個人情報の関係から概要のみ)

肢体の障がいによる年金請求
 幼い時期より脳障がいがあって動作に不便があったが、年齢を重ねるごとに日常生活が通常におくれない程となった。役所にて障がい基礎年金の相談をしたが、診断書の記載についても医師にうまく伝えられず、病歴申立て書の記載も難しいため、困難であった。このため、当事務所に相談をいただき、書類作成、代理人として医師への連絡や年金事務所との連絡などをお手伝いし、年金受給までに至った。
 過去に交通事故にあったが、自分ではあまり記憶に残っていなかった。現在になって脳からくる手足の障がいが出ているが、過去のことや現在の状況を聞かれてもどうして良いかわからない。障がい年金の請求をしたいが、離れた病院への診断書依頼や過去について探す方法もわからず当事務所へ相談。聞き取りや病院への問い合わせなどにより記録を確認でき、年金受給ができた。
眼の障がいによる年金請求
 幼い時期より視力が弱く、障害者手帳も取得していたが、年金請求は複雑なためあきらめていた。知人から話を聞いて請求しようとしたが、視力が弱いため自分ではどうすることもできずに当事務所に相談。過去からの状況を確認し、必要書類を揃えて年金請求までたどり着き、支給決定となった。
 同じように眼の障がいをもっているが、年金請求をあきらめていた。受給した知人より障がい年金の話を聞き、状態が同じと思われるので自分も請求できるのではないかと、当事務所に連絡をいただいた。何度か聞き取りを行った後、初診日の確定などの必要書類を準備し、受給にまで至った。
精神の障がいによる年金請求
 知的障がいで療育手帳も取得していたが、障がい年金には該当しないと思っていた。たまたま当事務所を紹介されて、知的障がい以外の障がいで通院をしているとの事から話を聞き、診断書の取得を行い、二つの障がいにて請求した結果、受給となった。
 以前に市役所の国民年金課を通じて請求を行ったが不支給となった。最近は状態も悪くなったと思われるが請求できるか当事務所に相談。本人は再度不支給となることを恐れて請求する気持ちが持てなかったが、家族のすすめもあって再度行うことを承知。不支給となった頃の病院と現在の通院先は違う所であるため、再度診断書取得も依頼。病歴申立て書にも状況を詳細に記載し、あらためて請求した結果、支給決定となった。
循環器障がいによる年金請求
 現在透析中であるので、障がい年金を受給できるのではないかと当事務所に相談。通常、透析に至った場合は2級程度の障がいであると言われているが、初診日の証明取得ができずに請求できない場合があることも説明。過去にさかのぼって資料や病院を探し、必要書類がそろったことから請求し、支給決定を得た。
 初診日がわからず、かなり前に通院したなどの記憶程度で請求準備ができない。当事務所にて病院に同席し、状況を確認。診断書の記入もれなどの訂正も何度か行い、本人が徐々に思い出して、過去の病院に受診状況等証明書を記載いただき、受給までに至った。