用語一覧

相続法の改正

<民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要>
1 配偶者の居住権を保護するための方策について
  配偶者の居住権保護のための方策は,大別すると,遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限りこれを保護する方策(後記⑴)と,配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策(後記⑵)とに分かれています。
 ⑴ 配偶者短期居住権    配偶者短期居住権の要点は,以下のとおりです。
 (要点)
  ア 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合の規律 配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償でその建物を使用するこ とができる。
  イ  遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合などア以外の場合 配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。
 ⑵ 配偶者居住権    配偶者居住権の要点は,以下のとおりです。
(要点)
 配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができることにする。
2 遺産分割に関する見直し等
 ⑴ 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
   持戻し免除の意思表示の推定規定の要点は,以下のとおりです。
 (要点)
 婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができる。)。
 ⑵ 遺産分割前の払戻し制度の創設等 遺産分割前の払戻し制度の創設等については,大別すると,家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策(後記ア)と,家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策(後記イ)とに分かれます。 それぞれの方策の要点は,以下のとおりです。
(要点)
  ア 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策 各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額(150万円)を限度とする。)までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。 【計算式】 単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)
    イ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策  預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。
  ⑶ 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する規律の要点は,以下のとおりです。
 (要点)
   ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。
   イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,当該処分をした共同相続人については,アの同意を得ることを要しない。
3 遺言制度に関する見直し
 ⑴ 自筆証書遺言の方式緩和
    自筆証書遺言の方式緩和の要点は,以下のとおりです。
  (要点)
  全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。
⑵ 遺言執行者の権限の明確化等
    遺言執行者の権限の明確化等の要点は,以下のとおりです。
  (要点)
   ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。
   イ  特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。
4 遺留分制度に関する見直し  遺留分制度に関する見直しの要点は,以下のとおりです。 
(要点)
⑴ 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。
⑵ 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。
5 相続の効力等に関する見直し  相続の効力等に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
 (要点)
 特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする。
6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
  相続人以外の者の貢献を考慮するための方策の要点は,以下のとおりです。
 (要点)
  相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は,以下のとおりです。なお,以下の資料もご覧ください。
 (要点)
(1) 自筆証書遺言の方式を緩和する方策 2019年1月13日 
(2) 原則的な施行期日    2019年7月 1日
(3) 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等 2020年4月 1日
2019年05月20日

解雇に必要な条件

 解雇は使用者の判断だけで成立するものではない。解雇が有効とされるためには、解雇権を濫用したと判断されないような理由が必要。(解雇権濫用の禁止)もし、解雇が客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇権を濫用したものと判断され、解雇が無効となる(労働基準法第18条2項)。
 すなわち、従業員を解雇する場合には、その従業員が解雇されるに足る客観的・合理的理由があると認められるかどうかを十分に調査する必要がある。
 解雇するために必要な理由とは 従業員を解雇する場合には、解雇するに足る客観的・合理的理由が必要。客観的・合理的な解雇事由としては、以下のようなものが考えらる。
  経営不振による解雇(整理解雇)
  売上の低下に伴い、経費削減を企図し、人員を削減するべく、従業員を解雇したい、と考えることもある。
 どの様な条件が整えば経営不振を原因として、従業員を解雇することが認められるのか?•  人員削減の必要性• 解雇回避措置の相当性• 人選の合理性• 手続の相当性を総合的に判断する考え方が主流となっている。

2019年05月20日

パニック障害

 パニック発作といわれる、急性の強い不安の発作を繰り返す症状を特徴とする病気。
 従来は不安神経症の一部として扱われてきたが、その特徴から、独立した病気として扱われるようになり、パニック障害と命名された。従来の不安神経症は、このパニック障害と慢性の不安状態が続く全般性不安障害とに二分された。
 パニック障害は、特別な原因やきっかけなしに急性に発症し、パニック発作を繰り返すことや、不安のため一人で外出したり乗り物に乗ることが困難になること、薬がよく効くことなどが特徴。
 原因はまだよくわかっていないが、心理的原因説は疑問で、脳内ノルアドレナリン系の過敏・過活動、あるいはセロトニン系の機能不全など、脳機能異常説が有力。
 また実験的な研究から、パニック障害の患者は、乳酸、炭酸ガス、カフェインなどに過敏で、発作が誘発されやすいことがわかっている。過労、睡眠不足、かぜなどの身体的な悪条件や、日常生活上のストレスなど、非特異的な要因も、発症や発作の誘因になることが知られている。
 パニック発作では、突然の激しい動悸どうき、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなどを伴う強い不安と、死ぬかと思うほどの恐怖に襲われ、多くの患者は心臓発作などを疑って救急車で病院へかけつけるが、病院に着いたころには症状はほとんどおさまっていて、検査などでも特別な異常はみられず、多くの場合そのまま帰される。
 しかし数日を置かず、また発作を繰り返し、次第に予期不安や広場恐怖が発展してくる。発作を恐れて一人で外出できなくなったり、医師から何ともないといわれていても心臓を心配して運動をひかえたり、病院を転々として検査を繰り返したりするようになる。
 症状が軽く、一過性でおさまってしまう場合もあるが、よくなったり悪くなったりしながら慢性に経過する場合が多くみられる。また、半数以上にうつ病を伴ってくることがあるので、注意が必要。

2019年05月20日

内容証明

○ 内容証明を出すことにより次の点でメリットがあります
   通知した内容を後日証明できます
   配達した事実と配達した日を証明することができます
   相手方に心理的なプレッシャーを与えることができます
○ 内容証明としてもデメリットもあります
   形式に制約があります
   費用がかかります
   他の書類と一緒にはできません
※ 内容証明を郵送する場合、3通用意されます。差出人と郵便局と受取人がそれぞれ保管することになります。このため内容の証明ができることになります。

 一般的には配達証明サービスを利用します。(2021年5月320円)これにより配達の事実と配達日を証明することができます。
 受取人に内容証明が届いた時に、郵便物等配達証明書というハガキが差出人に届きますので、届いたことも確認できます。
 形式として1行20字以内、1枚の用紙に26行以内、1枚あたり520文字以内となっています。その他、使用できる文字にも一定の制限があり、郵便局にて確認されるので、形式が満足しないと送れません。
 また、内容証明で郵送するには、普通の郵便と違って費用がかかります。内容証明料金として、現在(2021年5月)のところ通常の封筒郵送料金(例えば定型郵便50g、1通94円など)に、内容証明440円、1枚追加ごとに260円追加。一般書留の料金1通435円、配達証明320円、速達で出す場合は290円、合計した金額が必要となります。また、全ての郵便局で扱っているわけではなく、一定規模以上の郵便局のみです。
 最近は電子内容証明という方法もあります。こちらは、インターネットを通じて発送できるサービスです。Wordファイルで作成した内容証明文書をアップロードして送るもので、e内容証明と言われています。1枚あたり1584文字が記載できるので、1500文字で比較すると、紙では3枚、Wordでは1枚となり、費用も内容証明料金等が安くなっています。
 内容証明の送付は、時効の中断にはならず、催告にあたります。このため、相手方に催告を行って6か月の間に訴訟提起を行うことで時効が完成しないことができます。
 クーリングオフは契約の解除なので、内容証明で通知を送付することで一定期間内にクーリングオフをする旨の意思表示をした、つまり契約解除の通知を行ったことを証明することができます。

2021年05月18日